損益分岐点と値決め
算出された原価を「未来の利益」に変える視点
あなたの会社の「赤字にならない境界線」はどこですか?
原価計算の目的は、単にコストを正しく集計することではありません。算出した数字を元に、「あといくら売れば黒字になるのか」「今の価格設定で本当にいいのか」という経営判断の基準(物差し)を持つことにあります。
その中心となる概念が、「損益分岐点(そんえきぶんきてん)」です。
利益構造を「固定費」と「変動費」で整理する
経営改善の第一歩は、会社のコストを「売上に連動するかどうか」で2つに分けることから始まります。
- 固定費: 売上の増減に関わらず、毎月決まって発生するコスト
- 例:人件費、家賃、機械の減価償却費、リース料など
- 変動費: 売上が増えるほど、比例して増えていくコスト
- 例:材料費、外注加工費、発送運賃など
限界利益(貢献利益)という考え方
売上高から「変動費」だけを差し引いた利益を限界利益と呼びます。この限界利益が、毎月の固定費を上回った瞬間、会社に「純粋な利益」が残り始めます。
【実践】損益分岐点売上高を計算してみる
例えば、次のような会社がある場合を考えてみましょう。
- 売上高:5,000万円
- 変動費(材料・外注費):4,000万円
- 固定費(人件費・固定経費):1,500万円
この時、売上に対する限界利益の割合(限界利益率)は、(5,000 – 4,000) ÷ 5,000 = 20% となります。
損益分岐点売上高 = 固定費 1,500万円 ÷ 限界利益率 0.2 = 7,500万円
この会社の場合、今のコスト構造のままでは、売上高が7,500万円に達しない限り、赤字から脱却できないことが分かります。
原価計算が損益分岐点を「引き下げる」
損益分岐点を下げる(=より少ない売上で利益が出る体質にする)ためには、以下の3つのアプローチしかありません。原価計算を導入することで、これらへの打ち手が明確になります。
1. 変動費を削減する(限界利益率を上げる)
原価計算により、1製品あたりの「標準的な材料コスト」が把握できれば、仕損(ロス)の発生や調達コストの上昇をいち早く察知し、対策を講じることができます。
2. 固定費を圧縮する
工程ごとの工数管理を行うことで、製造現場の「無理・無駄・ムラ」が見えてきます。作業効率を改善し、残業代や不要な経費を抑制することで、固定費をスリム化できます。
3. 「攻めの値決め」を実現する
正確な原価が分かれば、根拠のない値引きを防ぎ、適正な利益を乗せた価格交渉が可能になります。「忙しいのに利益が出ない」という状況から脱する唯一の方法は、数字に基づいた値決めです。
数字は、経営を自由にする。
損益分岐点を把握することは、経営者の不安を「具体的な目標」に変える作業です。
当事務所では、単なる試算表の作成で終わらせるのではなく、原価計算の導入を通じて、貴社が「利益の出る価格設定」と「筋肉質な経営体質」を実現するためのサポートをさせていただきます。まずは現在の経営状況を整理し、目指すべきゴールを明確にすることから始めましょう。